翼のクリッピングをオススメしない理由

動物病院で働いていると、クリッピングをされた鳥をしばしば見かけます。
ペットショップでお迎えするときに、すでにクリッピングされている場合もあります。
今回は、
- 獣医師の視点から見たクリッピングのメリット・デメリット
- 獣医師がクリッピングをオススメしない理由
- 【実話】クリッピングをせざるを得ない状況もあることを知る
この3点についてお話ししたいと思います。

- 翼のクリッピングを考えている人、悩んでいる人
- クリッピングのメリット・デメリットを知りたい人
クリッピングとは
クリッピングとは、鳥が遠くまで飛ばないように風切羽を切ることです。
主に以下の目的で行われることが多いようです。
- 脱走防止
- 移動範囲をある程度制限する
- 手乗りになりやすい
切るのは「初列風切羽」
鳥の風切羽は、3つの部位に分けることができます。
- 初列風切羽
- 推進力(前に進む力)に関係している
- クリッピングする場合は、この羽を次列風切羽に揃えるように切る
- 次列風切羽
- 揚力(上昇する力)に関係する
- この羽を切ってしまうと、床に勢いよく落下し、骨折などのリスクがある
- 三列風切羽
クリッピングの【Q&A】
- 鳥に痛みはある?
-
クリッピングする部分は神経が通っていないため、痛みはありません。
人が髪を切るときに痛みを感じないことと同じです。
- 外側の初列風切羽を2,3枚残してクリッピングする方法もあるって本当?
-
ありますが、推奨していません。
残した初列風切羽が壁などにぶつかった場合、その衝撃で羽が折れてしまったり、根元から抜けてしまう可能性があります。
根元から抜けた羽の血管が退行していなかった場合、大量出血のリスクがあります。
- クリッピングは1度すればOK?
-
鳥には、正常なサイクルであれば、年に1~2回の換羽があります。
クリッピングした羽が抜けた後は、新しい羽が生えてくるため、再度クリッピングする必要があります。
クリッピングのメリット
①「万が一」のときの脱走防止になる(可能性がある)
クリッピングをすることで、鳥の移動範囲をある程度制限することができます。
ただし、クリッピングをしただけでは「脱走防止」の対策としては不十分です。
また、放鳥中は「脱走対策」に加えて「その他の安全対策」にも気を配る必要があります。
- 放鳥する前に、窓や扉が閉まっているか確認する
- キッチンが放鳥部屋にある場合、危険なものは無いか?
- 放鳥と料理を同時にしない
- 水が入ったままの鍋が放置されていないか
- 五徳コンロを舐めないような工夫がされているか(金属中毒の防止)
- 放鳥中は鳥から絶対に目を離さない
上記のような対策を行った上で、「万が一」が起きてしまった場合に、クリッピングが効果を発揮する可能性があるというだけです。
② 手乗りになりやすくなる(らしい)
私自身はクリッピングをした鳥を飼ったことはありません。
しかし、いろいろ調べてみると、
- 人とのコミュニケーションをとる時間が増えやすくなり、慣れやすくなる
- 手に乗っている時間が増える分、手乗りになりやすくなる
理屈的には確かに、とも思います。
ただ、これはあくまで一般論であることに注意が必要です。
本当に慣れる・手乗りになるかどうかは、その鳥の性格、飼い主の向き合い方次第です。
【実話】クリッピングせざるを得ない状況
ここまでメリットにも関わらず、クリッピングに否定的な意見を述べてきました。
しかし、当然ながら例外も存在します。
- 飼い主が病気を患ってしまい、身体が不自由になってしまった
このような場合、脱走対策をしていたとしても、いざというときに咄嗟に身体を動かすことができません。
また、鳥が高い所に飛んでしまった場合、鳥を戻そうと身体に無理をすることで飼い主自身にケガや持病の悪化のリスクがあります。
その他にも「どうにもならない状況」があるかもしれません。
その場合は一度、かかりつけ病院の獣医師に相談してみましょう。
クリッピングのデメリット
獣医師の立場からみると、やはりメリットよりも、デメリットの部分が多くなります。
① 慢性的な運動不足になりやすい
飛べないことで、必然的に慢性的な運動不足になるリスクがあります。
運動不足により体重が増加すると、
- 肥満など、生活習慣病のリスク
- エネルギーに余裕が生まれることによる、過発情のリスク
適正体重よりも過度に重くなってしまった場合、
- 無制限に食事を与えていた→食事制限の実施
- すでに食事制限をしている→さらなる食事量の減量
これらを行っていく必要があります。
② 飛べないことによる「ケガのリスク」
鳥にとって「クリッピングしたから飛べなくなった」という認識はありません。
特に成鳥になってからクリッピングをした場合、今まで普通に飛べていた鳥にとっては完全な「予想外」です。
高い所から飛び立ち、そのまま落下、打撲・骨折した例を経験したことがあります。
特に骨折の場合、折れた場所によっては、手術が不適応となることがあります。
手術によるピンニングができなかった場合、テーピングによる固定法がありますが、骨同士がキレイにくっつくことはありません。
③ 飛べないことによる「ストレス」
鳥にとって飛べないことは、人が考えているよりも大きなストレスになることがあります。
ストレスによるイライラから、
- 飼い主や同居の鳥に攻撃的になる
- 羽毛の毛咬みや毛引き、皮膚や脚の自咬に発展する
これらのリスクが挙げられます。
特に自咬に発展した場合、首にカラーを付けて生活しないといけない場合が多いです。
さらに、換羽が来て新しい羽が生えそろったとしても、すでにクセになっていることがあります。
つまり、自身の羽や皮膚、脚を咬んでいないと落ち着かない状況です。
こうなってしまうと、生涯のカラー生活を覚悟する必要があります。
まとめ
今回は【クリッピング】についてお話ししました。
個人的にはメリットよりもデメリットの方が多いと感じているのが現状です。
ただし、クリッピングをせざるを得ない状況というのも、確かに存在します。
クリッピングをする際は、ご自身の家庭環境や鳥の性格、これらを十分に踏まえた上で行うようにしましょう。
また、本当にクリッピングをした方が良いのか、そのほかの選択肢はないのかなど、かかりつけ病院の獣医師に相談してみるのも良いと思います。
参考
- コンパニオンバードの病気百科
- 著者の現場経験