自己肯定感

自己肯定感が低い人に共通する特徴とは

masiro

現代社会では、「自己肯定感が低い」「もっと自分を好きになろう」といったメッセージを多く目にします。

実際、「自己肯定感が低いままだと生きづらい」「対人関係がうまくいかない」と感じている人は少なくありません。

では、自己肯定感が低い人にはどのような共通点があるのでしょうか?

その背景には何があるのでしょうか?

本記事では、心理学の知見をもとに、自己肯定感が低い人に共通する特徴や心の傾向を解説しながら、少しずつそれを見直していくためのヒントをお届けします。

自己肯定感とは何か?

まずは基本的な定義を確認しましょう。

心理学者ローゼンバーグ(Rosenberg, 1965)は、自己肯定感(self-esteem)を「自分自身の価値に対する全般的な感情的評価」と定義しています。

言い換えれば、「自分は価値ある存在だと思えるかどうか」です。

この感覚が低いと、「自分はダメな人間だ」「他人の方が優れている」といった否定的な自己評価に傾きやすくなります。

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自己肯定感が低い人に共通する特徴8つ

特徴①:他人の評価に過度に依存する

自己肯定感が低い人は、自分自身の価値を自分の内側ではなく、他人の評価に委ねている傾向があります。

たとえば、褒められると一時的に気分が良くなるものの、少しでも批判されたり無視されたりすると強い不安や自己否定に襲われます。

これは「外的自己価値観(contingent self-worth)」と呼ばれ、外的な出来事に自己価値を左右されやすい状態です(Crocker & Wolfe, 2001)。

特徴②:完璧主義傾向が強い

完璧主義は、一見向上心の現れのように見えますが、「失敗してはいけない」「100点でなければ自分には価値がない」という自己否定の裏返しであることも少なくありません。

自己肯定感が低い人は、自己評価の基準が厳しすぎるため、どれだけ努力しても「まだ足りない」と感じやすくなります。

特徴③:人と比べて落ち込みやすい

SNSで友人の華やかな投稿を見たとき、「自分は何もできていない」と感じたことはありませんか?

自己肯定感が低い人は、他人との比較によって自分の価値を測ろうとする傾向があります。

これを「社会的比較理論(Festinger, 1954)」といい、特に下方向ではなく上方向の比較(自分より優れている人)に敏感です。

特徴④:「どうせ自分なんて」が口ぐせ

自己肯定感が低い人は、自分の能力や存在価値を過小評価する傾向があります。

「自分には無理だ」「どうせ失敗する」「周りに迷惑をかける」といった思考が強く、何事にもチャレンジしにくくなります。

これは「学習性無力感(Seligman, 1975)」とも関連しており、過去の失敗経験から「努力しても無駄」と思い込む状態です。

特徴⑤:他人に嫌われることを極度に恐れる

自己肯定感が低いと、自分の価値を他人の好意で保とうとするため、「嫌われたら自分には存在価値がない」と感じてしまいます。

そのため、他人に合わせすぎたり、断れなかったり、過剰に気を使ったりする「対人不安」や「過剰な同調」が見られることが多いです。

特徴⑥:感情を抑圧しやすい

怒り・悲しみ・不満などの感情を表に出すことに罪悪感を抱き、「いい人」を演じようとする傾向があります。

これは幼少期に「感情を表現してはいけない」「いい子でいなければならない」といった経験が影響している可能性があります(Rogers, 1951)。

特徴⑦:過去の失敗やトラウマを引きずりやすい

自己肯定感が低い人は、失敗やネガティブな出来事を長期間にわたって引きずる傾向があります。

頭では「もう終わったこと」とわかっていても、心がその出来事に縛られ、現在や未来に希望が持てなくなってしまうのです。

特徴⑧:「自分らしさ」がわからない

自己肯定感が低いと、自分の意見や価値観に自信が持てず、周囲に合わせて生きようとすることが多くなります。

その結果、「自分が本当にやりたいことは何か?」「自分にとっての幸せとは何か?」という問いに答えられず、空虚感を抱えるようになります。

なぜ自己肯定感が低くなるのか?

幼少期の環境が影響する

多くの心理学者が指摘しているのは、幼少期の親子関係が自己肯定感の形成に大きく関与するという点です。

たとえば、無条件に愛された経験が乏しかったり、厳しいしつけや否定的な言葉が多かったりすると、子どもは「ありのままの自分では価値がない」と感じやすくなります。

  • ロジャーズ(Rogers, 1951)は「無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)」が自己の成長に不可欠であると述べました。
  • 高垣忠一郎(1993)は、自己肯定感を「自己を価値ある存在として認める感覚」としており、それは他者との関係性の中で育まれるとしています。

自己肯定感が低いままだとどうなるか?

自己肯定感が低いことは、一時的には謙虚さや慎重さにつながることもありますが、長期的にはメンタルヘルスへの悪影響が大きくなります。

心の病のリスク

  • うつ病や不安障害などの精神疾患の発症リスクが上昇する(Orth & Robins, 2013)
  • ストレス耐性が低く、自己否定的な思考に陥りやすい

対人関係の問題

  • 自己主張ができず、対等な関係を築きにくい
  • 人間関係に疲れやすく、孤独を感じやすい

自己肯定感を回復するためにできること

自己肯定感は「性格」ではなく、「育て直すことができる感覚」です。

以下の方法を試すことで、少しずつ回復・安定させていくことが可能です。

自分の感情に気づく

「嬉しい」「悔しい」「悲しい」など、まずは今の感情にラベルを貼る練習をしましょう。

感情を否定せず、認めることが自己理解の第一歩です。

自分を褒める習慣を持つ

どんなに小さなことでも「できた」「頑張った」と認めることで、自己信頼が育っていきます。

「NO」と言える練習をする

無理な要求や不快な誘いに対して、自分を守るために断る力を少しずつ育てましょう。

セルフ・コンパッション(自分への思いやり)を学ぶ

批判ではなく優しさを向けるマインドフルネス的な考え方(Neff, 2003)は、近年注目されています。

まとめ:自己肯定感は「取り戻せる」

自己肯定感が低い人には共通する特徴がありますが、それは「心の癖」であって、変えられないものではありません。

大切なのは、「今の自分の状態に気づくこと」そして「自分に優しくすること」です。

「自己肯定感が低い」と気づいたその瞬間から、回復の第一歩が始まっています。

焦らず、少しずつ、自分に優しい眼差しを向けてみませんか?

参考文献・引用

  • Neff, K. D. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2(2), 85–101.
  • Rosenberg, M. (1965). Society and the Adolescent Self-Image. Princeton University Press.
  • Crocker, J., & Wolfe, C. T. (2001). Contingencies of self-worth. Psychological Review, 108(3), 593–623.
  • Festinger, L. (1954). A theory of social comparison processes. Human Relations, 7(2), 117–140.
  • Seligman, M. E. P. (1975). Helplessness: On Depression, Development, and Death.
  • Rogers, C. R. (1951). Client-centered Therapy.
  • Orth, U., & Robins, R. W. (2013). Understanding the link between low self-esteem and depression. Current Directions in Psychological Science, 22(6), 455–460.
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